2023.10.06

貯金が減るのは心配、でも頭金なしで家は買える?

建てる

2016年にマイナス金利政策が始まってから、頭金なしで家を買う方が増えています。貯金を減らさずに夢のマイホームを購入できるのなら、これほどうれしいことはないですよね。けれど、本当に頭金なしでも家は買えるのでしょうか?

今回は頭金の必要性をはじめ、頭金でよくある質問にお答えしていきます。頭金が用意できないときの対処法もお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

家を買うときに頭金は絶対に必要?

さっそくこの記事の本題である、「頭金の必要性」についてお伝えしていきます。

頭金なしでも住宅ローンは組める

結論からいうと、頭金なしでも家は買えます。最近では住宅価格分を全額融資する金融機関が増え、場合によっては諸費用も含めて融資を行う金融機関も出てきました。住宅価格以上の借り入れをすることを、「オーバーローン」といいます

たとえば4,000万円の家を買うときに、諸費用を含めて4,200万円借り入れできる場合もあるということです。 ただし金融機関によっては融資率に対して、段階的に適用金利が決まっていることがあります。「フラット35」でも融資率9割以下、越えであるかによって金利が異なり、融資率が9割を超えると金利が少し高くなります。

ただし「貯金0円」では家を買えない

頭金なしで家を買うことはできますが、「貯金0円」では家を買えません。 住宅の種類にかかわらず、土地や家を買うときには必ず「手付金」が現金で必要だからです。手付金の相場は売買価格の10%程度なので、2,000万円の土地を買うとしたら手付金を200万円ほど支払うことになります。

「手付金も住宅ローンで支払えばいいのでは?」と思うかもしれませんが、住宅ローンの融資を受けられるのは引き渡し時。家を買うときには、最低でも手付金分の現金が必要になるのです。

ただし手付金は住宅価格の一部なので、住宅ローンに組み込むことができます。手付金として先に支払った現金を、融資時に受け取ることは可能です。「頭金なしでも家を買える」と聞くと、貯金がなくても家を買えるイメージを持ちますが、最低でも手付金分の貯金は必要なことを覚えておきましょう。

家を買うときに頭金を入れるメリットと注意点

頭金なしでも家を買えるのに、あえて頭金を入れるメリットはあるのでしょうか?ここでは頭金を入れるメリットと、注意点をお伝えします。

頭金を入れるメリット

まずは頭金を入れるメリットを見てみましょう。

・住宅ローンの返済額を抑えられる
・金利上昇時に影響を受けにくくなる
・購入予算を高くできる

頭金を入れる大きなメリットは、住宅ローンの返済額を抑えられることです。たとえば、4,000万円の住宅を購入するときに、

・35年ローン
・・金利0.5%(返済中変動はないものとする)
・・元利均等返済
・・ボーナス返済なし

の条件だと頭金の有無で返済額にどのくらいの差が出るのか、シミュレーションしてみましょう。

■借入額4,000万円の場合
月々の返済額:103,834円
総返済額:43,610,126円

■借入額3,500万円(頭金500万円の場合)
月々の返済額:90,854円
総返済額:38,158,862円

月々の返済額で考えると1万円の差ですが、総返済額をみると頭金を抜いて45万円もの差がでます。返済途中に金利が上昇すると、もっと差は広がるでしょう。返済額を抑えられるのは、頭金を入れる大きなメリットと言えます。

頭金を入れると住宅購入予算を高くできることもメリットです。たとえば住宅ローンの借入限度額が4,000万円だったとき、見積もり金額が4,500万円だと予算が500万円足りません。

ここに頭金を500万円入れることで、見積もり金額に手が届きます。頭金を入れることには、住宅購入予算を増やせるというメリットもあるのです。

頭金を入れるときの注意点

「頭金は用意できるのなら入れたほうがいい」というイメージがあるかもしれませんが、すべての貯金を頭金にしてしまうのはおすすめできません。病気やケガなどで一時的に働けなくなる可能性や、家具家電の故障などによって、急な出費が発生したときに対処できなくなるからです。

このような事態に備えるお金を「生活防衛資金」といい、4人家族の場合は6か月分の生活費が目安といわれています。 生活費に月30万円かかっているのなら、180万円が目安です。 頭金を入れることも大切ですが、生活防衛資金は必ず残しておきましょう。

頭金についてよくある質問

ここまでは頭金を入れるメリットやデメリットを説明してきたので、ここからは頭金でよくある質問にお答えしていきます。

Q1. 頭金の目安はどのくらい?

A:一般的に頭金の目安は、住宅価格の10~20%が目安といわれています。 4,000万円の家を買うとしたら、400~800万円の頭金を用意するのが理想です。

Q2. 頭金なしで今家を買うのと、5年後に頭金を入れて家を買うならどっちがいい?

A:この先しばらく金利が上昇しないと仮定すると、頭金を貯めるよりも、頭金なしで金利が低いうちに家を買うことをおすすめします。 金利が低く返済負担が軽いうちに貯金を増やし、金利が上昇したときに繰り上げ返済をしましょう。

Q3. 実際に住宅購入した人は頭金をどのくらい入れている?

A:三井住友信託銀行が行った調査によると、20〜30代で一番多いのが「頭金なし」でした。続いて多かったのが、住宅価格の10%程度です。調査結果からみると、若年層で住宅を購入している方のほとんどが、頭金なし、または10%程度の頭金で住宅を購入していることがわかります。

参考:三井住友信託銀行「住まいと資産形成に関する意識と実態調査

現金を用意できないときにはどうすればいい?

頭金なしでも家は買えますが、貯金0円では買えないことをお伝えしました。どうしても現金を用意できないときには、どうすればいいのでしょうか。2つの対処法をご紹介します。

親族に支援をお願いする

現金の用意が難しいときには、親族に支援をお願いする方法があります。通常、年間110万円を超える贈与を受けると「贈与税」が発生しますが、住宅の取得資金の贈与は最大で1,000万円まで非課税となります。

住宅取得資金の贈与は、財産を親族に渡す1つのタイミングとも言えるのです。非課税枠は住宅性能によって異なり、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までと決まっています。現金の用意が難しいときには、親族に相談してみましょう。 ただしこの非課税制度が適用されるのは、「父母や祖父母など直系尊属」から贈与を受けた時のみであることに注意してください。

手付金分の現金が貯まるまでは購入を待つ

前項で「頭金が貯まるまで待つよりも、今家を買って繰り上げ返済したほうがいい」とお伝えしました。しかし前述したように、最低でも手付金分の現金は必要です。頭金なしで家を買うとしても、手付金分の現金が貯まるまでは住宅購入を待つことをおすすめします。

そのときの状況やマネープランから頭金を考えることが大切

超低金利が続いていることも関係して、最近では住宅価格に対して0〜10%の頭金で家を買う方が増えて、「頭金0円」での住宅購入が当たり前になりつつあります。しかし頭金なしで家は買えますが、最低でも手付金分の現金は必要です。不測の事態が起こったときのために、生活防衛資金も手元に残しておく必要があります。

住宅購入費用をすべて住宅ローンで借り入れできたとしても、返済が厳しくなるリスクもあるため、「限度額までローンを借り入れすればいい」と認識するのは危険です。ご自身の状況やマネープランを見直し、無理なく返済できる借入額と頭金を考えてみてください。